コーポレートファイナンスは、株主重視の企業経営です。以前の投稿でも記載をしましたが、コーポレートファイナンスとは、株主の立場で企業経営を考えるものです。そして、株主という立場で企業経営を考えるとき、重要な役割の一つに取締役会のメンバー選出というものがあります。
取締役会は、企業経営の意思決定機関。代表取締役は取締役会で任命されます。株主が、自分たちの利益を損なう人を経営者に選ぶことはありません。また、単に、そのような立場上の「機能」だけでコーポレートファイナンスを学ぶ必要性を大きくするものではなく、数多くの理由からコーポレートファイナンスは重要です。
① 資金調達手法の変化
戦後の日本において資金調達の方法は、銀行からの借入れが中心でした。それは今現在でも変化はありませんが、企業の資金調達に占める銀行借り入れの比率が低下しつつあることも事実です。きっかけとなったのは、貸手である銀行が規制や不良債権問題などに直面し、企業側のニーズにこたえることが難しい状況に追いやられていったため、銀行からの借入れに依存していた企業が別の資金調達ルートを確保する必要がでたためでした。株式調達や社債調達などのマーケットからの調達が注目を集め始めたのは1980年代以降といわれていて、いくつかの大手銀行が倒産したことも同時期にかさなっています。
銀行からの借入れは、預金者のお金が銀行を介して間接的に企業へいくことになるので間接金融といわれますが、マーケットからの資金調達は、投資家が企業の発行する株式や社債を直接購入するため直接金融といいます。
②株主重視の経営にはマーケットと上手につきあう必要がある
間接金融と直接金融での資金調達には大きな違いがあり、企業が経営において重視すべき点もおのずと変わってきます。間接金融の場合は、銀行からの借入れをスムーズに行っていくことが重要で、融資をうけるのに必要な担保となる土地や自社ビルなどを保有することや、安全な事業展開を心がけている等の要素が重視されます。逆に言えば、株主への利益還元を重視しなくても企業活動に支障をきたすことはないといえるかもしれません。直接金融による資金調達の場合は、企業の経営姿勢はマーケット、とくに株主を重視したものになる必要があります。仮に担保価値のある土地を保有していたとしても、それを有効活用できていないようであれば、株主にとっては好ましくない状況となるわけです。マーケットからの資金調達をスムーズに行うためには、企業は株主への利益還元策をしっかりと示します。マーケットでの信用を損なうと、新規調達が困難になってしまいます。株主が何を求めているかをしっかりと把握し、それを会社経営に反映させていくことによって、マーケットと上手に付き合っていく、それが株主を重視する企業経営です。
③産業発展
ベンチャー企業は、事業が起動にのると直接金融にシフトをしていきます。新規上場のことはIPO(Initial Public Offering)といい、起業家の一つの目標となっていることも多々あります。株式市場は、もとよりリスクマネーを提供する場という認識を持つことが正しく、先々の可能性も含めてポテンシャルを買ってもらう、というベンチャー企業の特性に合致します。債権者に対して負債の元利を返済できなければ企業は倒産しますが、株主に配当が支払われなくても企業は倒産をしません。
新規事業の成長は、産業の発展には不可欠であり、より多くのベンチャー企業が直接金融にて資金調達ができるようになれば、先行き不透明な日本経済にも光明がみえてくるかもしれません。一方で、リスクを覚悟で投資をする投資家は、より大きなリターンを期待していることも事実です。ベンチャー企業の経営陣は、リスクマネーを提供してくれる株主の期待をしっかりと理解する必要があり、それはリスクに対するリターン以外の何者でもありません。コーポレートファイナンスは、リスクとリターンの関係にも言及しています。
④コーポレートガバナンス
企業の業績が低迷した場合、株主には2つの選択肢があります。一つは投資資金を引き上げる選択肢で、もう一つは株主として企業にアドバイスを行い、企業業績の向上に協力する選択肢。コーポレートガバナンスは後者にあたります。一般的に、日本の大企業は好業績を出しているにもかかわらず、株主への還元が少ないのは企業経営姿勢に原因があるといわれています。そこで、株主として企業経営にアドバイスを行い、そこから具体的な要求をするようになってきました。機関投資家に代表される株主がコーポレートガバナンスの役割を担うと、企業経営に緊張感が生まれ、株主の要求にしっかりとこたえることの出来ない経営者は交代にすることになります。その際に利用されるのが、IR(Investor Relations)で、IR活動を通じて、投資家と企業が対話を促進し、マーケットとの関係性を良好にしていくことになります。
⑤株式の持合と持ち合い解消
一昔前の形ではありますが、日本の企業システムの特徴としてメインバンクシステムと方を並べていたのが、株式持合いとなります。今でこそ、良くないもの、という印象を多くの人がもっているかもしれませんが、当初のデザインというのは、株式をお互いに持ち合い、モニターしあうことで、より良い企業経営をしようというシステム。短所は、馴れ合いになってしまう点で、日本企業もこの点について問題視され解消に向かっていく流れが生まれました。
⑥従業員
日本では、株主重視の経営と従業員重視の経営といった形で対になっているような議論を展開されてしまうケースもありますが、コーポレートファイナンスにおける株主重視の姿勢というのは、決して従業員をおろそかにしているものではありません。従業員も、日々の業務だけでなくたとえばストックオプション制度などを通じて、株主としての行動が取れまし、従業員をより重視した結果として株主への還元が出来なくなってしまうと、結果的に株主は資金を引き上げ、企業経営が成り立たなくなってしまう等の関係性を全ての従業員がしっかりと理解をする必要があります。従業員がコーポレートファイナンスを学ぶことで、なぜ経営者の判断や、もしかすると苦悩なども含めて、よりマーケットと企業との関係性を理解することが出来ます。
⑦投資家と学生
前例のない長期間の低金利となっている日本において、今後、経済力も含め低下してくる少子高齢化の波の中、社会保障や老後の生活という意味での年金等、多くの問題を抱えています。そのような中で、ますます年金だけに頼らない老後の資金の運用が必要になってきますので、株主への利益還元を優先して行う企業には当然、資金が集まりやすくなってくるでしょう。また、企業の経営姿勢は学生が就職先として選ぶ基準にもなります。
コーポレートファイナンスは、そのような企業の具体名を教えてくれるわけではありませんが、そのような企業を探し出すためのヒントを学ぶことができます。